革の手帖

本革のトートバッグ、選ぶ前に見てほしいところ——A4の入り方・持ち手・裏地・底

本革のトートバッグ、選ぶ前に見てほしいところ——A4の入り方・持ち手・裏地・底

革のトートバッグを探していると、どれも同じように見えてくることがあります。黒か茶色の四角い胴に、持ち手が二本。写真と寸法表を並べて見比べても、なかなか決め手が見つからない。

トートの使い心地を左右するところの多くは、実は寸法表には載っていません。持ち手の付け方や、内側の仕立て、底の作りといったところです。今日は私たちの本革トートバッグを例にしながら、選ぶときに見てほしいところをお話しします。

A4が「入る」と「ゆとりをもって入る」のあいだ

私たちのトートは、縦300mm・横380mm・マチ100mm、持ち手の高さは200mmです。A4の書類は297×210mmですから、横向きに入れると左右に40mmほどずつ余ります。

この余りが、毎日の使いやすさを決めます。A4ぴったりの鞄は、書類一枚ならきれいに収まっても、クリアファイルやノートを重ねたり、手帳や水筒と一緒に入れたりした途端に、出し入れが窮屈になります。マチの100mmも同じで、書類の束の横に小物が並んで立つくらいの奥行きがあります。

寸法表を見るときは、入れたいものの寸法を横に書き出して、差がどれくらい残るかを確かめてみてください。数ミリしか残らない鞄だと、出し入れのたびに口元の革が擦れていきます。

私たちのトートは受注生産なので、サイズのご指定も承っています。毎日入れるものが決まっているなら、その寸法から逆算した大きさで仕立てることができます。

持ち手は、胴のどこまで縫ってあるか

黒の本革トートバッグの正面。持ち手のベルトが胴の前面を下り、底の帯まで縫い付けられている

写真をご覧ください。持ち手のベルトは口元で折り返して終わるのではなく、胴の前面を下って、底の帯のところまで伸びています。ベルトの両側の縫い目が、上から下までまっすぐ続いているのが見えると思います。

荷物を入れて持ち上げたとき、重さはまず持ち手の付け根にかかります。付け根だけで留めてあると、そこに力が集まり、革が伸びたり縫い目が傷んだりしやすくなります。ベルトを胴の下まで縫い下ろしておけば、重さを胴全体で受け止められます。見た目には控えめですが、長く使ってもらうための大事な仕事です。

縫製は、長い直線をミシンで縫い、持ち手の付け根のように力のかかるところは手縫いで補強しています。縫う場所によって求められる強さが違うことは、革を縫う糸のお話でも少し触れました。

裏地を付けない、という仕立て

本革トートバッグの内側。布の裏地は無く、革の裏面がそのまま見えている

内側を覗くと、革の裏面がそのまま見えます。このトートには、布の裏地を付けていません。

裏地のある鞄は内側がすっきり見えて、小物も引っかかりにくいものです。ただ、何年も使ううちに、裏地の布が表の革より先に擦り切れてしまうことがあります。表の革はまだこれから味が出てくるところなのに、中の布が先に傷んでしまう。裏地を付けなければ、鞄は内も外も革のまま、同じように年を重ねていきます。口元にも留め具を付けていないので、開けたらそのまま手が入ります。

そのかわり、中は一つの広い空間です。鍵やイヤホンのような小さなものは、底のほうで迷子になりがちです。内ポケットを付けるかどうか、いくつ付けるか、それからサイズのご指定も、ご注文の前にお問い合わせからご相談ください。仕立てに反映します。

前ポケットと底の、シボの違い

本革トートバッグの底の角。胴よりもシボの深い革の帯が、底をぐるりと巻いている

前ポケットと、底をぐるりと巻いた帯。ここだけ革の表情が違って見えるかもしれません。シボ(革の表面に出るしわの模様)が深く、胴のなめらかな面とは別の革のようにも見えます。

実は、どれも同じ革です。一枚の革でも、取る場所によってシボの出方はずいぶん変わります。部位による違いは革の「部位」で変わる表情で詳しく書きましたが、大きなパーツを何枚も裁つ鞄では、その違いが一つの鞄の上にそのまま並びます。

ですから同じ型でも、仕立てるたびに表情は少しずつ変わります。ご注文をいただいてから一つずつ裁つ作り方では避けられないことですが、その鞄だけの表情として受け取っていただけたらうれしいです。

色はブラックとブラウンの二色です。革はイタリアンレザーや栃木レザーなど、タンニンなめしの革から仕立てます。ご注文をいただいてから裁断を始めるので、お届けまでは約3〜4週間、価格は25,980円(税込)です。

毎日提げる鞄には、持つ人の手の癖や、いつも入れている荷物の形が少しずつ写っていきます。握るところから艶が出て、胴がやわらかく体に沿ってくる。その変わっていく様子を、ぜひ手元で見届けてください。詳しい寸法と写真は本革トートバッグの商品ページにまとめています。

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手帖は、つづく。

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