革のコインケースの選び方——小銭入れは「居場所」で選ぶ
レジでの支払いは、すっかりスマホとカードが当たり前になりました。財布を出す機会そのものが減った、という方も多いのではないでしょうか。
それでも、小銭はふとした瞬間に手のなかへ戻ってきます。神社のお賽銭、コインパーキングの精算機、古い喫茶店、街角の募金箱。子どもへのお駄賃だって、やっぱり小銭がいい。キャッシュレスがどれだけ進んでも、小銭がぴたりとゼロになることは、案外ないのです。
問題は「小銭が要るか要らないか」ではなく、「小銭をどこに住まわせるか」。今日は、その居場所としての革のコインケース——小銭入れの選び方を、作り手の目線でお話しさせてください。
キャッシュレスでも、小銭はゼロにならない
小銭をメインの財布に入れっぱなしにしていると、いつのまにか財布がぷっくりふくらんできます。硬貨は重く、角があり、まとまると意外にかさばる。革でいちばん薄く仕立てた財布ほど、小銭の重みで型が崩れ、コインを入れるあたりの革が先にくたびれてしまうのです。
そこで、財布は札とカードだけの薄いものにして、小銭は別の小さな箱に移してやる。財布のシルエットがすっきり保たれ、革も長持ちします。キャッシュレス時代にコンパクトな財布が選ばれる理由はコンパクト財布が選ばれる理由で詳しくお話ししていますが、コインケースはその相方——「小銭の逃がし場所」として効いてくる存在です。
コインケースの形を知る——ボックス・馬蹄・L字
ひとくちにコインケースと言っても、開き方でずいぶん使い勝手が変わります。まず覚えておきたいのがボックス型。口が大きく箱のように開いて、中の小銭がひと目で見渡せます。指先で狙った硬貨をつまみ出せるので、レジ前でもたつきません。厚みは出ますが、出し入れのしやすさは随一です。
昔ながらの馬蹄型は、片手できゅっと握ると口が開く、道具として気持ちのいい形。L字ファスナー型は、ぐるりと閉じるので中身がこぼれず、小銭と一緒にカードやお守りをしのばせる方に向いています。スナップボタンでぱちんと留めるだけの薄型は、とにかく身軽でいたい人の味方です。
どれがいちばん、という話ではありません。硬貨を一日に何度も出す人はボックス型、めったに使わない人は薄型で十分。ご自分の小銭との付き合い方から逆算して選ぶのがいちばんです。
選ぶときに見るのは、広さと、開け閉めと、栃木レザー
実際に手に取ったら、まず中をのぞいてみてください。いまどき小銭をじゃらじゃら持ち歩く方は少ないので、必要以上に大きなものは要りません。とはいえコインケースは小銭だけの道具とも限らず、鍵やアクセサリー、常備薬、イヤホンのピースなど「なくしたくない小さなもの」の指定席にもなります。何を入れたいかで、ちょうどいい大きさは変わってきます。
開け閉めのしやすさも、実物があれば一度ためしてみてください。硬貨を一枚つまみ出す、その仕草の軽さが毎日効いてきます。けれど、いちばん長く付き合うのは革そのものです。私たちがコインケースによく使うのは、栃木レザーをはじめとするタンニンなめしの革。硬貨は重くて擦れる相手ですが、しっかりなめした革は型崩れしにくく、その擦れがかえって内側を磨いて艶に変えていきます。栃木レザーの素姓については栃木レザーとはに詳しく書きました。
色は、毎日何度も開け閉めする小物だからこそ、いちばん元気に育つところ。手の脂と摩擦をたっぷり浴びて、財布や鞄より早く艶が乗ってきます。最初の一色を「育ちきった姿」まで見越して選ぶコツは革小物の色選びにまとめていますので、迷ったらのぞいてみてください。
SpringHikerのコインケース、二つの形
SpringHikerのコインケースで、まず手に取っていただきたいのがブローグ レザーコインケースです。口が大きく開くボックス型で、表には靴のようなブローグ(穴飾り)をあしらいました。栃木レザーで仕立てた縦80×横100×厚さ25mmの小さな箱は、小銭はもちろん、アクセサリーやイヤホン、常備薬を入れる相棒としても働きます。ぱかりと開いたときの気持ちよさは、写真だけではなかなか伝わりきりません。ぜひ一度、手のなかで開いてみてください。
小銭とカードをひとつにまとめて、もっと身軽に出かけたい方には、カードケース&コインケースを。スナップボタンで開閉する縦75×横100×厚さ20mmのミニマル設計で、カード2〜3枚と小銭がすっきり収まります。色はブラック・キャメル・ブラウンの三色からお選びいただけます。キャッシュレス派の普段づかいに、ちょうどいい一つです。
育てて、名前を入れて、長く
コインケースのお手入れは、財布と同じでかまいません。内側は硬貨で擦れやすいので、時どき柔らかい布で乾拭きを。乾きが気になってきたら、革用クリームをごく薄く、というくらいで十分です。よかれと思ってオイルを塗りすぎると、かえってべたつきやシミの元になります。ちょうどいい量と頻度はオイルケアの頻度と量に、現場の感覚のまま書いておきました。
小さくて毎日ふれるものは、贈りものにもよく似合います。名前やイニシャルをそっと刻んでおけば、それだけで「自分だけの一つ」に。書体や入れる位置は、贈る相手の手元を思い浮かべながら決めていきましょう。名入れは名入れサービスから承っており、別の形や色でというご希望はオーダーメイド相談からお気軽にどうぞ。
コインケースは、財布や鞄にくらべればずっと小さな道具です。けれど一日に何度も開け閉めするぶん、革はいちばん早く、いちばん生き生きと育ってくれます。革が飴色に変わっていく道のりそのものは、経年変化の楽しみ方にも綴っていますので、あわせてどうぞ。
はじめの一つに革を育てる楽しみを味わうなら、じつは小銭入れが近道かもしれません。口が大きく開くブローグ レザーコインケースから、あるいは一つずつ手縫いで仕立てる受注生産のご相談から。あなたの手のなかで育っていく小さな箱を、心を込めてお仕立てします。
手帖は、つづく。