SpringHikerの制作工程:一つの製品ができるまで
受注生産というスタイル
SpringHikerの革小物は、すべて受注生産でお届けしています。ご注文をいただいてから、ひとつひとつ手作業で仕立てる。在庫を大量に抱えず、お客様のために一つの製品を丁寧に作り上げる。それが私たちの選んだスタイルです。
「注文してから届くまで時間がかかるのでは?」と思われるかもしれません。確かに、量産品のような即日出荷はできません。しかし、その分、革の状態を見極め、最良のコンディションで仕立てることができます。一人ひとりのお客様の手に届く製品が、最高の状態であること。それが受注生産の最大のメリットです。
ここからは、一つの革小物が完成するまでの工程を、順を追ってご紹介します。
工程1:革の選定と裁断
革の選定
制作は、革の選定から始まります。SpringHikerでは主に栃木レザーを使用していますが、同じ栃木レザーでも一枚一枚表情が異なります。
革は天然素材のため、部位によって厚みや繊維の密度が違い、色の濃淡にも個体差があります。職人は革を広げ、傷やシワ、血筋(血管の跡)の位置を確認しながら、製品に最適な部位を見極めます。
特にペンケースのように筒状に仕立てるアイテムは、繊維の流れ方向が使い心地に直結するため、革の選定は特に慎重に行います。
裁断
使用する部位が決まったら、型紙に合わせて裁断します。革の裁断は布と違い、一発勝負。失敗すればその革は使えなくなります。
裁断には革包丁や回転カッターを使い、型紙の線に沿って正確に切り出します。直線だけでなく、曲線部分は特に集中力が必要な作業です。ミリ単位のズレが、完成品の仕上がりに影響を与えるためです。
工程2:下処理(コバ磨き・接着)
革漉き(かわすき)
裁断したパーツは、そのままでは厚すぎる場合があります。特に折り返し部分や、パーツが重なる部分は、革漉き機や手漉き用の道具を使って厚みを調整します。均一な厚みにすることで、縫い合わせた際に美しいラインが生まれます。
コバの下処理
コバとは、革の断面(切り口)のこと。裁断したままのコバは繊維が露出しており、そのままでは見た目も耐久性もよくありません。この段階でヤスリで断面を整え、最初の下地処理を行います。
コバの仕上がりは、革製品の品質を判断する重要なポイントのひとつ。ここに手を抜かないことが、長く使える製品を作る基本です。
接着
複数のパーツを組み合わせる前に、革用の接着剤で仮止めします。縫製の際にパーツがずれないようにするための工程です。接着剤は薄く均一に塗布し、オープンタイム(接着剤が適切な粘着力を持つまでの待ち時間)を見極めて貼り合わせます。
工程3:縫製
革小物の縫製には、大きく分けて手縫いとミシン縫いの2つの方法があります。
手縫い(サドルステッチ)
菱目打ちと呼ばれる道具で等間隔に穴を開け、2本の針を使って糸を交差させながら縫い進める手法です。サドルステッチと呼ばれるこの技法は、一箇所の糸が切れても全体がほどけにくいという強度上の利点があります。
手縫いは時間がかかりますが、糸の引き具合を一針一針調整できるため、均一で美しいステッチラインが生まれます。ペンケースやキーケースなど、小さなアイテムに適しています。
ミシン縫い
トートバッグのような大きなアイテムや、直線の長い縫い目にはミシンを使用します。工業用の革用ミシンは家庭用とは異なり、厚い革も確実に縫い進める力があります。
ミシン縫いでも、糸のテンション調整やスピードコントロールは職人の技術が問われるポイント。革の厚みや硬さに合わせて、最適な設定を見極めます。
糸の選び方
革の色や風合いに合わせて、糸の色と太さを選びます。コントラストを楽しむために、あえて革と異なる色の糸を選ぶこともあります。SpringHikerでは、耐久性に優れたポリエステルの蝋引き糸を主に使用しています。蝋引き加工により糸の滑りが良くなり、縫い目が安定します。
工程4:仕上げ(コバ処理・検品)
コバ処理
縫製が完了したら、最終的なコバ処理を行います。これは革製品の品質を決定づける、最も根気のいる工程のひとつです。
- 目止め:コバに専用の処理剤を塗布し、繊維を固めます。
- 研磨:ヤスリで表面を滑らかに整えます。番手を段階的に上げ、徐々に細かく磨いていきます。
- 磨き:帆布やスリッカーと呼ばれる道具で磨き上げます。摩擦熱で処理剤が定着し、光沢のある美しい断面に仕上がります。
この「塗布→研磨→磨き」のサイクルを数回繰り返すことで、滑らかで耐久性のあるコバが完成します。触ったときに引っかかりがなく、見た目にも美しい。それが丁寧なコバ処理の証です。
検品
最後に、完成した製品を一点一点検品します。
- 縫い目の均一さ、糸の緩みがないか
- コバの仕上がりは滑らかか
- 金具の取り付けは確実か
- 革の表面に傷や汚れがないか
- 全体のバランスと形状
すべての項目をクリアした製品だけが、お客様のもとへ届きます。
一つの製品にかかる時間
製品の種類にもよりますが、小さなキーホルダーでも2〜3時間、ペンケースや財布は4〜6時間、トートバッグになると丸一日以上かかることもあります。
これは純粋な作業時間であり、接着剤やコバ処理剤の乾燥待ち時間を含めると、さらに長くなります。一見シンプルに見える革小物にも、これだけの時間と手間がかかっているのです。
受注生産のメリット
- 無駄がない:必要な分だけ作るため、余剰在庫による廃棄がありません。環境にも、革という貴重な素材にも誠実であり続けたい。それが私たちの考えです。
- お客様のために作る:注文を受けてから革を選び、裁断し、仕立てる。その一連の工程すべてが、受け取ってくださるお客様のために行われます。
- 最高のコンディション:倉庫で長期間保管された在庫品とは異なり、作りたてのフレッシュな状態でお届けできます。革のしなやかさや香りを、最も良い状態で感じていただけます。
まとめ
一つの革小物ができるまでに、革の選定、裁断、下処理、縫製、仕上げと、多くの工程を経ています。その一つひとつに職人の目と手が入り、妥協のない品質を追求しています。
受注生産だからこそ実現できる丁寧なものづくり。SpringHikerの製品を手に取ったとき、そこに込められた時間と想いを少しでも感じていただければ幸いです。
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制作工程や素材について、もっと詳しく知りたい方はお問い合わせページからお気軽にご連絡ください。
手帖は、つづく。