ブルガロとは?トスカーナの老舗タンナーが生む、育てる革の魅力

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「ブッテーロやミネルバボックスは知っているけれど、ブルガロは初めて聞いた」——そんな方も多いかもしれません。

私たちSpringHikerが日々の制作で手に取る革のなかでも、このブルガロは特別な存在です。手に載せた瞬間に伝わるオイルの潤い、使い込むほどに深まる色艶。一度この革で何かを仕立てると、また次もブルガロで作りたくなる——そんな引力を持った革です。

今回は、私たちが制作で愛用しているこのブルガロについて、素材の背景から経年変化の楽しみ方まで、じっくりお話しします。

ブルガロ コニャックブラウン — Lo Stivale社のバケッタレザー
ブルガロ #309 コニャック。折り返すと表面の滑らかさと革の厚みが伝わります

ブルガロを生むタンナー「Lo Stivale(ロ・スティヴァーレ)」

ブルガロを製造しているのは、イタリア・トスカーナ州サンタ・クローチェ・スッラルノに工房を構えるConceria Lo Stivale(コンチェリア・ロ・スティヴァーレ)社。1950年代の創業以来、植物タンニンなめし一筋で革づくりを続けてきた老舗タンナーです。

サンタ・クローチェといえば、バダラッシ・カルロ社(ミネルバボックス)やワルピエ社(ブッテーロ)が拠点を置く、イタリア植物タンニンなめしの聖地。Lo Stivale社はこの地で「バケッタレザーだけを作る職人集団」として、半世紀以上にわたり同じ配合で革を作り続けています。

特筆すべきは、なめしに使う油脂をすべて自社で調合しているという点。どの魚油を使い、どの港から仕入れるかまで管理する徹底ぶりは、イタリアでも極めて珍しいと言われています。

バケッタ製法——千年の伝統が生む革

ブルガロの仕上げに用いられるのは、トスカーナで千年以上受け継がれてきた「バケッタ製法」です。

原皮には牛のショルダー(肩)部分を使用します。ショルダーは繊維が詰まっていて、しっかりとしたコシがあるのが特徴。この原皮を、栗(チェスナット)やミモザといった植物タンニンでゆっくりと鞣していきます。

ブルガロの銀面(表)と床面(裏)
銀面(表)のきめ細かさと、床面(裏)の繊維の詰まり具合が見て取れます

鞣しの後、職人の手でじっくりとオイルを加脂していく工程が、バケッタ製法の核心です。機械ではなく、人の手でオイルを革の繊維の奥まで染み込ませる。この手間のかかる工程があるからこそ、ブルガロ独特の潤いのある質感が生まれます。

最後に染料で仕上げます。顔料ではなく染料を使うことで、革本来の表情——自然なムラや動物が生きていた証である小さなキズ——がそのまま残ります。これは「隠さない仕上げ」とも言えるもので、一枚一枚異なる表情こそがブルガロの個性です。

触れてわかる、ブルガロの質感

ブルガロを初めて手にしたとき、多くの方が驚くのがその滑らかさです。シボ(表面の凹凸)がない、きめ細かいスムースな表面。指を滑らせると、オイルの潤いが伝わってきます。

ブルガロ キャメル — しなやかさとコシのバランス
キャメル色のブルガロ。巻き上げると、程よいしなやかさとコシのバランスが伝わります

厚みは約2.0〜2.2mm。革小物に使うには十分なハリがありながら、硬すぎない。「コシはあるけど、程よくしなやか」——私たちが制作現場でよく使う表現ですが、まさにそんな革です。縫製のときに針が素直に通り、コバ(断面)の磨きも美しく仕上がる。作り手にとっても扱いやすい素材なのです。

同じイタリアンレザーでも、ブッテーロはもう少し硬質でパリッとした印象、ミネルバボックスはシボがあって柔らかい手触り。ブルガロはちょうどその中間——滑らかさと適度な弾力を兼ね備えた、バランスの良い革と言えます。

使い込むほどに深まる色——ブルガロの経年変化

植物タンニンなめし×染料仕上げのブルガロは、経年変化(エイジング)がとても美しい革です。

新品の状態では明るく澄んだ色合いですが、日々手に触れ、光に当たることで、タンニンがゆっくりと酸化し、色が深まっていきます。たとえばブラウンのブルガロなら、半年から1年ほどの使用で落ち着いたダークブラウンへと変化します。

ブルガロ ネイビー — 深みのある藍色
ネイビーのブルガロ。使い込むにつれ、さらに深い藍色へと変化していきます

色の変化だけではありません。手の油分が革に馴染むことで、使い始めにはなかった奥行きのある艶が現れてきます。毎日ポケットに入れて持ち歩く財布なら、摩擦によって変化のスピードはさらに加速します。

一方で、バッグの内側や普段触れない部分は変化がゆっくり。同じ製品のなかでも場所によって異なる表情が生まれるのは、天然素材ならではの面白さです。

染料仕上げゆえに、雨や汗には少し気を遣う必要がありますが、これは本物の革である証拠。日常的なケアについては、以前の記事「革小物の正しいお手入れ方法」もぜひ参考にしてみてください。

豊富なカラーバリエーション

ブルガロのカラーバリエーションは実に豊富で、定番のブラウンやブラックはもちろん、鮮やかなレッドやオレンジ、落ち着いたネイビーやグリーンまで、14色ほどが揃っています。どの色も染料仕上げならではの透明感があり、革の表面に奥行きを感じます。

ブルガロ ブラック — 静かな光沢のネロ
ブラック(ネロ)。漆黒のなかにも染料仕上げならではの奥行きと静かな光沢があります

SpringHikerでは、ブラウン系やブラック、ネイビーといった定番色を中心に使用していますが、オーダーメイドではお好みの色をお選びいただくことも可能です。「こんな色のペンケースが欲しい」「名刺入れをネイビーで」——そんなご相談も、オーダーメイドページからお気軽にどうぞ。

ブルガロで仕立てる、日々の道具

滑らかな表面、しっかりとしたコシ、美しいコバ——ブルガロの特性は、小さな革小物を仕立てるのにぴったりです。

ペンケースや名刺入れのように毎日手に触れるものなら、経年変化を存分に楽しめます。キーケースやAirPodsケースのように、ポケットの中で揉まれるアイテムなら、数ヶ月で驚くほど表情が変わるはず。

「道具は使ってこそ育つ」——私たちはそう考えています。ブルガロという革は、まさにその言葉を体現してくれる素材です。

SpringHikerの革小物は、すべて受注生産でお作りしています。素材のご相談も含めて、お気軽にお問い合わせください。あなたの手で育てる、世界にひとつの革小物をお届けします。

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