手帳シーズンがやってくる——来年の手帳を迎える前に、「書く道具まわり」を革で整える
8月の後半に入ると、文具売り場の一角が静かに入れ替わり始めます。並ぶのは、来年の手帳。まだ夏の暑さが残っているのに、棚の上だけはひと足先に新しい年へ進んでいる——手帳がお好きな方なら、あの独特の空気に覚えがあるのではないでしょうか。
どの手帳にするかを迷う時間は、それ自体が楽しいものです。ただ、私たちは革の工房なので、毎年この時期に少しだけ違うことを考えます。手帳そのものではなく、手帳を包むものと、隣に置くペンの居場所のこと。今日はその話をさせてください。
手帳は一年で替わる。カバーは育ち続ける
紙の手帳は、一年で役目を終えます。書き込んだページは本棚へしまわれて、机の上には新しい一冊がやってくる。この「一年ごとの入れ替わり」が手帳の良さでもあるのですが、革のカバーを使っていると、そこにもう一つの時間が流れ始めます。
カバーだけは、年をまたいで残るのです。今年一年、毎日手に取って開け閉めした跡——手のひらが触れる場所の艶、フラップの馴染み、角の丸み——そのすべてを持ったまま、来年の手帳を包む。手帳は替わっても、カバーは育ち続ける。この感覚は、一度味わうとなかなか手放せません。
私たちのA6サイズの手帳カバーは、栃木レザーの黒。黒は色の変化こそ控えめですが、そのぶん艶の育ち方が素直に出ます。使い始めのマットな表情が、開け閉めを重ねるうちに深い光をまとっていく。フラップを手縫いのステッチで仕立てた、金具に頼らないつくりです。以前の記事「ほぼ日手帳に本革カバーを」では、このカバーの設計を詳しくご紹介しています。
ペンの居場所を決める——「一本挿し」という考え方
手帳とセットで考えたいのが、ペンです。何本も持ち歩く必要はない。手帳に合わせるのは、いちばんよく使う一本だけでいい——そう考えると、ペンケースの選び方も変わってきます。
私たちの一本挿しペンケースは、その名のとおりペンを一本だけ挿して包む、細身のかたちです。ファスナーもホックもなく、革のベルトにすっと差し込むだけ。金具がひとつもないので、鞄の中で手帳を傷つける心配がありません。大切な万年筆やお気に入りのボールペンに「決まった居場所」をつくってあげる。それだけのことですが、書く時間の始まりが少し丁寧になります。ペンケース選び全般については「革のペンケースという選択」もどうぞ。
机の上に、静かな統一感を
手帳カバーとペンケースを同じ黒の革で揃えると、机の上に静かな統一感が生まれます。声高に主張するものは何もないのに、開くたび、手に取るたびに気持ちが少し整う。道具の色と質感を揃えるというのは、そういう小さな効き方をします。
もちろん、黒がすべてではありません。明るいヌメ革が飴色へ育っていく変化を楽しみたい方もいるでしょう。最初の一色をどう選ぶかは「革小物の色選び」で書いたとおり、「育ちきった姿」から逆算するのが私たちのおすすめです。
10月始まり・1月始まり——受注生産の逆算
手帳には10月始まり、1月始まり、4月始まりがあります。もし10月始まりの手帳を革のカバーで迎えたいなら、動き出すのは今ごろがちょうどいい。私たちの製品は受注生産で、ご注文をいただいてから一つずつ手縫いで仕立てるため、お手元に届くまでにお時間をいただきます。新しい手帳が届く日に、カバーが間に合っていない——それは少しさみしいので、使い始めの日から逆算してご相談いただけると安心です。
贈りものにも——手帳とカバーをひと組で
手帳シーズンは、贈りものの季節でもあります。新しい年の手帳に革のカバーを添えてひと組で贈る。名入れでイニシャルを刻めば、世界にひとつの「書く道具」になります。手帳を毎年使う方への贈りものは選ぶのが難しいものですが、「手帳は好みで選んでもらい、カバーを贈る」という組み立てなら、外すことがありません。
来年の手帳を選ぶ楽しみに、「その手帳を包むもの」を選ぶ楽しみを、ひとつ足してみませんか。書く時間が、きっと少し変わります。カバーもペンケースも、お使いの手帳やペンに合わせたご相談を受け付けていますので、どうぞお気軽にお声がけください。
手帖は、つづく。